私は歯科医師で、2人の子どもも医学部生ですが、もともと医師とは無縁の家系で育ちました。子どもの頃からなぜか高価なもの、良いものに惹かれやすく、今もいい車に乗りたいと常々思っていますし、欲は尽きません。それが原動力の一つになっているのかもしれません。

地域密着型のクリニックを目指して、22年前に宇都宮市で開業しました。どのクリニックも同じだと思いますが、患者さんの多くは「歯が痛い」「噛めない」などの困りごとを抱えて来院します。もちろん、そのような患者さんに対しては治療に最善を尽くしますが、治ったからといって放置していると、時間が経てばまた悪くなってしまいます。当院では“デンタルフィットネス”といって、予防歯科に重きを置いて患者さんのセルフケアの意識を高める取り組みに力を入れています。患者さんが自分の意思で健康な歯を維持できるように、スタッフはきめ細かなクリーニングやポジティブな声かけを心がけています。患者さんが「また削られる、麻酔をされる」と憂うつな気持ちで来院するのではなく、良い状態を維持するために、ジムにでも通うように前向きな気持ちで通ってくれるように働きかけます。院全体で定期的に勉強会に参加し、全国170院ほどが参加するデンタルフィットネスの会合では、うれしいことに「浅井歯科はとても素晴らしいです」とほめていただきました。患者さんから嬉しいお声をいただくことも増え、予防歯科に対する意識の変化も感じられるようになりました。まだ始まったばかりではありますが、患者さんのお口の健康をサポートする為にスタッフ一丸となって取り組んでいます。

当院は今年で開業23年目を迎えますが、順風満帆だったわけではありません。過去には思わぬ裏切りに遭い、精神的に落ち込んでしまったこともありました。そんな時、私を支え、クリニックを守ってくれたのがスタッフたちでした。以前、クリニックの事務長を務めていた父に「おまえは優しい性格なのに、その優しさが経営に生かされていない」と指摘されたことがあったのですが、ようやく父の言葉の意味が分かった気がしました。スタッフたちのおかげでクリニックを経営できていることを痛感し、心から幸せにしてあげたい、笑顔でいてほしいと思いました。そして自分のように心を病んでしまうような思いをスタッフには絶対にさせないようにしようと決意しました。