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荒津寛
1976年2月大阪生まれ。建設業や産業廃棄物関連企業など、様々な職業を経て、2015年10月にZEROPLUS株式会社(愛知県豊橋市)を設立。遺品整理、不用品の片付け、買取り、貿易業などに携わる。産廃関連企業時代に「日本ではまだまだ使えるのに廃棄されている物がフィリピンでは喜ばれる」ことを知り、現地で100%出資のオークション会場を開設。他にも家じまいの業界団体である一般社団法人心結(しんゆう)に加盟し、業界の底上げのために尽力している。
https://www.kaishu-zeroplus.net/
※本サイトに掲載している情報は2022年5月 取材時点のものです。

INTERVIEW

産廃関連企業に勤務していた頃、十分使えるにもかかわらず廃棄される物が多いことに違和感を覚え、これまで捨てられていたものを再利用する仕組みができないかと考えるようになりました。そこで、社名には「ゼロの価値をプラスにできる会社にしたい」という強い思いを込めました。日本で廃棄される物(ゼロ)がフィリピンでは商品として立派に活用される(プラス)ことに着目しました。遺品整理や不用品回収で集めた品を現地に送って販売するグローバルなリサイクルシステムは、そうした考えを具現化したものです。核家族化が進み、かつてのような家族による形見分けが行われなくなった現在、弊社も携わる遺品整理への関心は高まっています。それだけに、今後のビジネスの広がりに期待しています。

片付けだけでなく依頼者の心も整える遺品整理

荒津寛

中学を卒業後、様々な職に就きました。10代の若さで、勤務先の倒産という想定外の経験もしたため、いつかは起業したいという気持ちを胸に秘めていました。産廃関連会社に勤めていた時、日本の中古品をフィリピンに輸出する仕事にたまたま携わりました。フィリピンでは日本で廃棄される物がよく売れるからです。ところが、その会社が輸出事業から撤退することになり、別の事業者に転じて、引き続き対フィリピン輸出を手掛けました。しかし、私と会社の事業に対する方針に温度差が生じたため、継続を断念することになりました。自らが主体的に動かない限りやりたいことはできないことを痛感し、夢であった起業を果たしました。

起業した以上潰すわけにはいきません。勤務先の倒産で、仕事がなく若くして途方に暮れた苦い経験をしているだけに、決してなくならない仕事は何かと考えていく中で辿(たど)り着いたのが遺品整理でした。この仕事は「物を片付けて終わり」ではなく、依頼者が悲しみを乗り越えて次のステップに進めるよう、その心の中の整理をお手伝いする重要な意味を持っています。そのため、仕事を進めるにあたっては、依頼者の要望を丹念に聞くように努めています。ゆっくりと時間をかけたい、全部任せたい、一品一品確認しながら丁寧に進めたいなど、遺品に対する思いは十人十色です。幸い数多くの現場に立ち会い、様々なケースを見てきているので、その方にとって最も適切な提案ができます。整理の途中で貴金属が出てきたら、買い取らせていただく場合もあります。

最近は、空き家対策の相談を受けることが多くなりました。処分の方法として解体するという選択を仮にした場合、多くの依頼者はどこに頼めばよいかが分かりません。そんな時には弊社の提携業者を紹介します。土地を売りたいとお考えなら不動産会社を紹介することもできます。このように遺品整理に関わる仕事をワンストップでできるのが弊社の強みです。現場での作業と並行して、葬儀会館などで「遺品整理よりも生前整理」というセミナーを開いたり、作業の動画をサイトにアップしたりもしています。そうして、弊社の仕事や業界の動きに興味を持ってもらうような活動にも力を入れています。

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遺品整理は業者に委ねることを当たり前に

日本では捨てられてしまう物でも、フィリピンでは大歓迎されます。そのことに着目して始めた事業は、日本国内における遺品整理や不用品回収などで集めた「商材」を活用することで、一つのビジネスモデルとなりました。事業を進める際の根底にあるのは「物と、そこに込められた個人の思いを大切にしたい」ということです。ゴミとして廃棄するのではなく、物として使ってもらうほうが不用品にとっても幸せでしょう。そこで、現地に100%出資のオークション会場を開き、管理・運営にあたることにしました。フィリピンにおける日本製品の人気は絶大です。安かろう悪かろうではなく、安くても壊れないからです。また、日本では遺品であっても現地の人は気にしないばかりか、アンティークとして受け入れてくれる。そういう見方は面白いと思います。

考えてみると、20~30年前までは引っ越しというと、トラックを借りてきて自分で行うのが当たり前でした。家族や親族、会社の同僚に助けてもらうことはあっても、基本的に「自前」でした。ところが今は、業者に依頼するのがスタンダードになっています。それと同じように、「遺品整理も業者に頼むのが当たり前」という流れを作ることができたら、遺品に対する認識も変わり、物に対する見方も変わってくるのではないかでしょうか。併せて、まだまだ知名度が決して高いとは言えない遺品整理という仕事に光を当て、メジャーなビジネスとして認められるようにしたいとも思っています。

事業を進めていく上での私の道しるべは、信頼を築くことです。そのためには、人と人との出会いを大切にし、決して嘘をつかないことです。依頼者の様々な要望に対しては、「できない」と言うのではなく、「できる方法を考える」ようにしています。起業後、今日まで曲がりなりにも事業を続けてこられたのは、そうした出会いと信頼によるものだと確信しています。今後は、同じ志を持った全国の仲間と手を携えて、活動の輪を広げていきたいと考えています。そのための基盤として、業界団体「心結」も立ち上げました。また、弊社が運営している障がい者就労支援施設運営などの社会貢献活動にも力を注いでいく考えです。

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