咬み合わせ治療の「丸山咬合医療」との出会いで、私の歯科医としてのスタンスは大きく変わりました。患者様の歯の咬み合わせを見れば全身の状態もある程度分かるようになりましたし、一般歯科の頃は虫歯を治したり痛みを取り除いたりと患者様のその時のニーズに応えることにひたすら注力していましたが、今は「自分の歯を残してあげれば、老後も健康に過ごすことができるだろう」と先のことにも思い及ぶようになりました。「患者様に健康でいてほしい」という思いがより一層強くなったと思います。今年で開業27年。地域の皆様の口腔と全身の健康を守るために、今も常に勉強の日々です。
咬み合わせ治療に活路を見出す
歯学部生の頃から「卒業して5年で開業する」という目標を持っていたので、勤務医時代に開業のノウハウを勉強し、予定通り5年で地元和歌山に青木歯科医院を立ち上げました。開業当初は一般歯科を標榜していましたが、2〜3年目でふと「このままやっていけるのだろうか」と不安に駆られるようになりました。歯科医院の数が飽和状態にある中、地方で生き残るためには普通の治療をしていてもだめだと危機感を抱くようになったからです。ちょうどその頃、研修先で大阪大学名誉教授の丸山剛郞先生と出会い、「丸山咬合医療」を知ったことが大きなターニングポイントとなりました。
丸山先生は補綴(欠けたりなくなったりした歯をかぶせものなどの人工物で補うこと)の分野を探求するうちに下顎の位置が全身の状態に影響を及ぼすことに気付き、下顎のズレを治すことで身体の硬直が取れ脳機能や全身の状態を改善する丸山咬合医療を編み出しました。私も初めて知った時はこんな考え方があるのかと衝撃を受けたものです。
すぐに丸山先生のいる大阪大学に出向いて実際の治療を見学させてもらいました。歯科医師でありながら患者様の全身をくまなく診る姿が印象的でした。何より驚いたのが、車いすで来院した患者様が、咬み合わせを治したことでその場で立ち上がり、自力で歩いたことです。歯科医師が口腔だけではなく全身に変化を起こす様子を目の当たりにして、私も丸山咬合医療を習得すべく必死で勉強しました。もちろん簡単でないことは分かっていましたが、一つのことにのめりこむ性分なので勉強は苦になりませんでした。何より、私自身も丸山先生の治療を受けて身体が楽になった実感があったことも、大きなモチベーションになっていました。丸山咬合医療の習得後は、咬み合わせ治療を当院の診療の柱に据えました。今も毎月丸山先生の元に出向き、様々な症例を見学させていただいています。
より多くの歯科医師に咬合学を知ってほしい
丸山咬合医療では咬み合わせの他にも歯の形や咀嚼運動のことまで学びます。私もそうでしたが、そこまで網羅している歯科医師はほとんどいません。咬合学は習得に時間のかかる難解な分野ですが、学ぶことで口腔だけでなく全身を良くすることができる歯科医師が一人でも増えればと思います。私が所属する日本咬合学会でも、歯科医師への啓蒙活動に取り組んでいるところです。
医科との連携もこれからの課題です。頭痛や肩こりなどの不定愁訴があり、病院や整骨院に通っても治らなかった人、「原因不明」のままの様子見の人、そういう方々を「医療の谷間に落とされた人」と言いますが、そんな患者様が咬み合わせを治すことで改善したケースを数多く見てきました。そのような患者様は顎のズレから身体に歪みが生じているので、医科と歯科の両面から全身にアプローチすればよりスムーズに改善するはずです。医科と歯科はまったく畑が違うので連携は簡単ではありませんが、お互いの分野への理解を少しでも深めることができればと思います。
当院が提供する一般の歯科治療と丸山咬合医療、併設のデンタルエステサロン「ホワイトエッセンス」の施術を通じて、患者様に健康と幸せを手に入れてもらうことが私の使命です。口元に悩みがあり人前で思いきり笑うことができない人が、少しでも自信を持つ手助けができればうれしいですね。口元に自信を持てば、人との出会いやコミュニケーションをもっと積極的に楽しめるようになります。そうして笑顔になる機会が増えれば、いつまでも若々しく健康でいられるはずです。さらに咬み合わせの治療で不調も改善できれば、QOLも格段に向上するでしょう。患者様の口腔環境を良くすることは、健康長寿の獲得につながると確信しています。