- 安藤幹
- 1971年生まれ、大阪府出身。10代の頃、PCやプログラミングに親しむ。大学在学中にオーストラリア留学を経て、94年大阪有線放送に就職。97年、セルカム入社。2017年に代表取締役就任。
- https://selcam.co.jp/
3Ⅾプリンターやインクジェットプリンターをはじめとする機器、ソフトウエアを駆使して、お客様が望むものを具現化することが私たちの仕事です。アパレル、屋外広告、墓石屋さんなど、多種多様な業種のお客様がいらっしゃるので、去年と今年を比べてもまったく違う仕事をしています。飽きることがありませんし、面白いですね。お客様は、用事がなくても「何か面白いものがありそう」と言って会社を訪ねてきてくださいます。BtoB企業でありながら、ふらっと立ち寄れる街のコンビニのような会社だと思います。
両親ともに教師でしたが、厳しく育てられたということはありませんでした。勉強を見てもらったこともありませんし、のびのびと自由な子供時代を過ごしました。大学生の時、恋人に振られたことがきっかけで、環境を変えようと一念発起。貯金を握りしめオーストラリアに留学しました。必死に英語を勉強しましたし、周囲には起業を目指しているような野心的な仲間もたくさんいて、かなり刺激を受けました。1,2年で帰国するつもりが3年以上滞在してしまったので最後のほうはお金も底をつき、海でとった貝や魚を食べてしのいだ時期もあります。
帰国するとバブルが崩壊していて、いくら英語が話せても就職先がありませんでした。知人のアパレル事業を手伝い、英語を生かして海外の限定品を仕入れる役割を担っていました。それで生計を立てる自信があったのですが、両親は心配していましたね。ちゃんと就職もせずふらふらしているように見えたのでしょう。親を安心させるためにも一度大きな企業に就職しようと思い、大阪有線放送に営業マンとして入社しました。半年もすると営業成績上位の常連になりました。しかしどれだけ結果を出しても、私個人の声が経営に反映されることはありません。大きな組織はこんなものかと肩を落としました。
「小さな会社なら一社員の声も届くかもしれない」と中小企業に絞った転職活動をして、ソフトウエア開発を手掛けるセルカムと出会いました。入社を希望しましたが、当時のセルカムは経営が傾いていたために断られてしまいます。私は「給料はいらないから」と毎日出社しました。お金よりも、とにかく自分の声が届く環境がほしかったのです。しかし、ここでも私の意見はなかなか聞き入れてもらえません。会社を良くしたいだけなのにと不満に思っていると、社長に「主張したいことがあるならきちんと論理立てて文章にして持って来ないと」と忠告されたのです。提案書や企画書の大切さを知り、必死で作成するようになりました。
会社では営業部門がまともに機能していませんでした。私はシステムエンジニアとして入社しましたが、営業もさせてほしいと訴え、会社の立て直しに奔走しました。業績が回復するのに3年かかりましたが、そこからは右肩上がりに伸びていきました。経営が安定し始めたころ、若い社員を数人雇ったものの全員に辞められてしまったことがあります。私が厳しすぎたことが原因でした。先回りして「そのやり方じゃ失敗するぞ」としかっても、人は成長しません。自分のコピーを作ろうとしてはだめなのだと痛感しましたね。苦い経験でしたが、今は「俺の時代はこうだった」「なぜおまえにはできないんだ」というような押し付けはせず、どうすればうまくいくかを社員と一緒に考えるようになりました。お互いの意思を尊重し、話し合うことを何よりも大切にしています。これは相手が社員でもお客様でも家族、友人、恋人でも同じです。
社長に就任したのは2017年、46歳の時です。入社したころに比べると、仕事のしやすさ、風通しの良さを感じられるようになったと思います。会社で働く時間は一日の大半を占めるので、その時間が楽しくない、充実していないというのは人生の半分をどぶに捨てているようなもの。できるだけ楽しい時間にしたいですし、それが結果的に会社の利益にもつながると思っています。今年から企業主導型の保育園事業もスタートし、女性が安心して長く働ける環境づくりにも注力しているところです。大手企業は生産性を上げるためにものづくりの拠点を海外に移していますが、今こそ私たち中小企業の腕の見せどころです。小ロット多品種を追及し、町工場でカッコいいものを作れることを示して、国内のものづくりに元気を取り戻したいですね。そうやって世の中の役に立つ会社になれば、100億企円企業も夢ではありません。
幸せでなければ、あなたのポテンシャルを発揮することはできません。自分が幸せであれば、人に幸せを与えることができますし、仕事のクオリティも格段に上がるはずです。ネガティブな気分の時は、楽しそうな人、幸せそうな人と会って幸せを分けてもらいましょう。自分ファーストで、自分が幸せになることを心がけながら、人生を楽しんでください。
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