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秋元里奈
1991年生まれ、神奈川県出身。神奈川県相模原市の野菜農家に生まれる。慶應義塾大学理工学部卒業後、2013年DeNAに就職。webサービスのディレクター、営業チームリーダー、新規事業の立ち上げを経て、スマートフォンアプリのマーケティング責任者に就任。16年、ビビッドガーデンを創業。オンライン直売所「食べチョク」を立ち上げる。
https://vivid-garden.co.jp/
※本サイトに掲載している情報は2021年3月 取材時点のものです。

INTERVIEW

日本の一次産業に貢献したい一心で突っ走ってきましたが、「感情」と「論理」のバランスを常に意識しています。起業した人は誰しも強い思いを持っていますが、感情や思いだけで駆け抜けられるフェーズを過ぎると、長期的な視点も持たなくてはいけません。思いだけでは本質を見誤ることもあります。強い思いを持って突き進む自分と、それを制御する冷静で論理的な自分が一人ずついるような感覚で経営しています。

やりたいことがないのがコンプレックスだった

秋元里奈

小学生の頃はおとなしく、休み時間はいつも教室の隅で漫画を描いているような子でした。実家が農家で、双子の弟と一緒に畑で草むしりをしたり、もぎたての季節の野菜をかじったりして過ごしました。学校の農業体験や授業で同級生たちが私の家に来ることもあり、農家であることを誇らしく思っていました。
人前に出るのが苦手な性分でしたが、大学3年生の時、学園祭実行委員のリーダーに選ばれたことが大きな転機になりました。自分に務まるのか不安でしたが、どうせやるなら今までにない楽しい企画にしようと奮起し、メンバーたちと衝突したり悩んだりしながらも組織を一つにまとめ上げ、大盛況のうちに終えることができたのです。今まで生きてきた中で一番楽しいと思えるほどの成功体験でした。
その後の就職活動は金融系の手堅い企業を中心に受けていたのですが、友人に誘われてDeNAの説明会にふらっと足を運んだんです。創業者が「成功確率50%の仕事を任せる」と話していたのが印象に残りました。金融系の会社よりも失敗を許容する社風を感じましたし、ここに入ったほうが毎日学園祭みたいな経験ができそうだと思い、入社を決めました。
入社半年で営業チームのリーダーになったり、いきなりマーケティング責任者になったりと、無茶振りとも思える仕事を次々に任されたおかげで、ある程度のことは「なんとかする力」をつけることができました。ただ、仕事は充実していた一方、自分が本当にしたいことが何なのか分からず引け目を感じていました。

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生産者に貢献できる「生産者ファースト」でありたい

ある時、久々に実家に戻ると、子供の頃に馴れ親しんだ色とりどりの美しい畑が見るかげもなく荒れ果てていたんです。「どうしてこうなってしまったのだろう」と無性に悲しくなりました。あちこちの農家を訪ねて話を聞いてみると、人材不足とか、農地が余って荒れているとか、販路が限られていて高く売れないといった同じような課題を抱えていることが分かりました。課題が明確ということは、伸びしろがあるということです。自分にも農業に貢献できることがあるのではないかと考えました。
会社を辞めるつもりはなかったので、最初は週末だけ活動していましたが、性格的に一度に複数のことに情熱をつぎ込むのは無理だったんですよね。起業はハードルが高いとためらっていましたが、覚悟を決めました。失敗のリスクを負ってでもやってみたいと初めて心から思えました。
起業して、オンライン直売所「食べチョク」の事業を立ちあげました。以前からネットでもわけあり品を安く売るようなサービスはありましたが、私が作りたかったのは生産者がこだわりの商品を自分が決めた価格で販売できる場所です。最初は生産者を集めるのに苦労しました。門前払いされることもありました。私の思いを知っていただくために一件一件生産者を訪ね、一次産業を教えてくださいと頭を下げ、一緒に畑で汗を流すことから始めました。そうやって話をする中で、私を信頼し、共感してくださる方が少しずつ増えていきました。サービスの内容よりも「人」の部分を見られていたのだと思います。
「食べチョク」が始動したものの、最初はなかなか売れなくて。野菜を買う場所がいくらでもある中から私たちのサービスを選んでいただくことの難しさを感じました。でも月に1、2件しか売れなくても、農家はレビュー欄で消費者の声を直接聞けたことを喜んでくれました。だからこそ、もっと頑張らなければと思いましたね。消費者が見やすいようにサイトの改善を重ねたり、メディアに取り上げられたりしながら、売り上げは少しずつ右肩上がりに伸びていきました。
今後どれだけ事業規模が大きくなっても、生産者に利益を還元するスタンスは守り続けなければいけません。一緒に働いてくれている社員たちにも「生産者ファースト」を浸透させていきたいですね。

自分のしたいことがなかなか見つからない人もいると思います。私もそうでした。でも、見つけるタイミングは人それぞれです。今はSNSで手軽に発信することもできますし、若い人がビジネスをすぐに始められる環境も整っています。
やりたいことが見つかった時には、小さくてもいいのでまず一歩踏み出してみてください。一緒に頑張りましょう。

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